白神ももこブログ
2021年。

2021年、明けましておめでとうございます。

いつもお世話になっている方々、ありがとうございます。

2020年はてんやわんやで、丁寧どころかバタバタと過ごしてしまいました。

今年はきちんとやって来たことを記録していきたいと考えています。

少しずつ。記録することがとても苦手ではありますが、それでも見えるようにしていかなければどんどん風化していってしまう、コロナもあってそう思いました。

特に、昨年の年明けにキラリふじみで行った『幻想曲』などはコロナ禍の今、、ほぼ幻想となってしまったように思います。もうあのような作品は作れないかもしれない、と思っていると暢気な私でも危機感を覚えました。

私の作品は売れるようなものではなく、再演もいつも難しいものです。

先日の『幻想曲』、モモンガ・コンプレックス『わたしたちは、そろっている。』は恐らく再演が難しい作品です。

なので、この作品を近々しっかり振りかえってここに記しておきたいと考えています。

というわけで、本年もどうかどうかよろしくお願いいたします。

白神ももこ

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撮影:キラリふじみ・ダンスカフェ スペシャルコラボレーション『幻想曲』富士見市民文化会館キラリふじみマルチホール ©Miura Mariko

★844A5407mm のコピー★6E3A5367mm のコピー

Festival/Tokyo20 『わたしたちは、そろっている。』東京芸術劇場シアターイースト©Miura Mariko

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キラリふじみ「モガ渓谷」の記録②

ライブ配信への振り切り!

4月終わりのzoom会議であった。緊急事態宣言も発令されこのまま見通しが不安になっていた。

最初は、手作りマスクをみんなでするとか空間をソーシャルディスタンスを保てる仕組みを、、などと話し合っていたのだが、もうそもそも子どもたちに来てもらう前提で作ると後々中止等に追い込まれたりするのではないだろうか??というところから配信にすることを提案。

配信といっても単なる映像作品にしたものを配信することには魅力を感じていなかったし、配信コンテンツはもう溢れて飽和していた。

なるべくフェスティバルに参加しているような感覚で、楽しめるよう、カメラマンはプロではなく田上と白神が観客として撮り、感想やコメントを言う形式にしたらどうか、ということになった。

「集まれないのなら、web上に集まるのはどうか?」

モガ渓谷のwebサイト

毎月やっていたこどもステーションも中止になり、5月のこどもステーションは私たち芸術監督と文通をするということだった。そのこともあり、子どもたちからモガ渓谷にいそうなヘンテコな生き物や地図などを募集してみんなでモガ渓谷という場所を作って行くことにした。webサイトはフライヤーデザインをお願いしていた水色デザインさんとアグネス吉井の白井愛咲さんに急きょお願いした。まずは生き物や地図の絵の例を良くキラリふじみを利用してくださるお子さまやご両親に協力して描いてもらった。その後徐々に投稿が増えて行き、小学校が始まった時に広報をしたら倍になった。小学生だけではなく未就学児から大人までが幅広く投稿してくださった。自由に描いていいと言うところと、芸術監督が必ずコメントをした。後々は追い付かなくなって、出演者にもコメントをしてもらい、モガ出演者とお客さんを繋いでいった。

モガ渓谷サイトの画像

モガ渓谷webサイトは最終日このようにweb上でもたくさんのアイデアが集まった景色に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後々、モガ渓谷の踊りや音楽を集めたいとも思っていた。

どうしたらハードルの高い踊りや音楽が応募しやすいかということも課題だったが、誰かが描いたヘンテコな生き物から着想した動きや音楽やオリジナルの動きや音楽どちらでも良くした。

募集動画【動き】↓

募集動画【音楽】↓

 

思っていたよりもたくさんの投稿があり、知らない誰かと誰かとの共同制作が行われていた。コロナ禍で集まってワークショップなどの共同制作ができない中で、新しいやり方を見出していたと思う。

ー配信のハードルー

配信する、カメラマンは田上と白神でやる、にしても配信の技術に無知であった。

そのため、富士見市民でもありモーメント・ファクトリーのクリエイターでもある前田直也さんに仲間になってもらうことにした。

下見でお会いしたのが6月4日だったから、本当に一ヶ月前という直前で申し訳なかった。前田さんなしではどうにもこうにもだったが、最初はできないと思っていたことを可能にし、臨機応変にやりたいことを実現させてくださり、当日はお仲間を3名(カメラマンなど映像の仕事をやっている方々で面白そうだからとボランティアで来てくださった)も連れて来てくださった。皆さん、アイデアマンたちで、ハンディカメラの電波がどうしても届かない三角形エリアをどうにかするために車等の日よけみたいなものを反射版のように持ってくれたり、カメラの後ろには見えないけどいろいろ試行錯誤してくださっていて、まるで昔テレビができたばかりの時の撮影(知らないけど)みたいだった。そもそも最初が「完璧な映像作品というより、テレビができた頃のようなローテクで面白いアイデアで頑張ってる感」というのがやりたかったので、真骨頂だったかもしれない。

カメラもハンディだけでなく、空間ややりたいことを読み取って定点カメラをメイン会場である展示会議室に3台、音楽ライブがあるコリドーに1台用意してくださった。

前田さんには、「これ、映像スタッフ一人でできるもんじゃなかったね、、」と言われたけど、皆さん埼玉の方々で、新しいことにウキウキしてくださったのがありがたかった。本当に感謝でしかない。

ー音響ー

配信の壁はもう一つあった。

音の問題だ。音楽のライブを予定していたから音楽をそのままカメラから録ったものを配信すると低音が全く消えてしまい、すかすかな音になってしまう。

さらに、台詞や歌はどうしても聞こえづらくなってしまったり切り替えたカメラによって遅れてしまったり、するのだ。

更に、メイン会場の展示会議室の反響が酷く、音の抜け的にも野外経験のある清野美土さん的にも外が良いだろう、ということでライブ会場はマルチホール前のガラスの壁を開けてコリドーで行うことになった。

これはダンスをやっている私はかなり盲点だった。甘かったことを反省している。急きょ、ダンスカフェでかえるPで来てくれていた大園康司さんが音響として入ってくれた。彼にもかなり感謝している。

 

配信に切り替わったことで、空間や演目も変更してもらう。

ー美術ー

お客さんを入れて客席も含めての空間だったところをカメラで録るロケ地的な空間にしてもらう。

演劇やダンスなどもあるため、段差や床等の工夫、カメラに録ると面白いであろう空間にしてもらう。大きく3つの空間で構成され、穴というコンセプトから菜種(富士見では菜の花畑に力を入れている)でできた穴、古墳も多いことから古墳イメージの段差のある空間、大きなばかでかい三角形の空間。

菜種は、砂よりも踊りやすいし、中の黄色い円が少し出てくるのも面白かった。

廊下やアトリエには瓶にさした草花。草花は近くの時田農園さんから頂く。

この辺り、長峰さんさすがだな、と思う。菜種エリアモガ△の断片モガ長峰さんモガ

↑長峰さん、Facebookより拝借。

ー演目についてー

中身はだいたい変わらないようにということであったが、映像向けにするための試行錯誤は各団体あった。

モモコンは、場所は一カ所にしたためだいたい普通にお客さんを入れる演目と一緒だったが、定点だと退屈してしまう内容なため、カメラマンの私が移動したりすることで臨場感を出した。曖昧さもカメラでは伝わらないのではっきり間を持たせたり空間を遊ぶようにした。

田上パルは、俳優がカメラを持つという設定を劇中に組み込み、上手く演出していてアングルなども凝っていた。俳優と一緒に作っている、新たな配信の試みでもあると感じた。一番綿密だったかと思う。

ぶんがくざこどもげきも定点ではなくハンディで追うことやお芝居の導入や場面事にテロップを俳優が出しに行ったりゼラをつかったりとかなり工夫されていた。ここは、田上がカメラを回していて、文学座の斉藤祐一さんと二人三脚で行っていた。田上は、休憩中も暇さえあれば文学座のカメラ練習をしていて自分の作品よりも練習していたかもしれない。

笠井瑞丈×奥山ばらばは、当初お願いしていた白塗り講座も快くやってくだっさり、映像にして差し込みにしてくれた。屋上やキラリふじみをまんべんなく使った映像ならではの構成でもあった。また、とんでもない演出を劇場側も映像の前田さんも理解しトライしてくださったのも大きい。このチームは私がカメラを担当。思うままに追いかけることができ、カメラにハマりそうだ。

アグネス吉井は、ワークショップで呼んでいたので頭を悩ませたと思う。募集した地図を使ってゲーム実況をアナログでやるというアイデアは、webを担当して地図の使い途を考えてくれた白井さんならではでもある。ここは田上、白神がカメラを回しつつ途中でバトンタッチしてアグネス吉井の沿うワークショップを受けたりする場面も。

ミュージシャンたちは清野美土さん中心にモガ渓谷用に新曲を作ってくれたのと、モモコン、田上パル、笠井×奥山チームそれぞれに参加してくださり、かなりの登場率だった。音響大園さんともゲネプロなどから綿密に表現したいことをやり取りして配信の弊害を少しでもなくす努力をしてくださった。

このようなところから、日々積み重ね、慣れない映像配信を行った。

制作スタッフや舞台監督の連携もかなり重要であり、そういう意味では現場の団結力が必須な状況であった。

その中で、感染防止用の対策→前半、後半と入り時間を分けたり、随時アルコールで拭く、前半はリモート会議をしリハーサルや下見は半分の人数で行う、ライブ中はなるべく密をさけた配置で水辺等も使用、着替えの入れ替えなどの徹底もあったため、普段より格段気を使うことも多かった。

このコロナ禍で劇場や舞台業界が危機に立たされている中で、私たちにどんな可能性が残されているのか、どのように可能性を見出して行けば良いのかを考えて開発し、トライしていけたのがこの「モガ渓谷」だった。例え親子向けとは言えど、未来のために私たちは何を示していくのか、どうあって欲しいのか、を大人が汗をかいて次へ引き継いで行かねばならないと思っている。

 

とはいえ、新しいことにわくわくし、楽しくスリリングな時間だった。

そして、この企画は田上豊と芸術監督二人体制だったからできたことだと思う。

モガ舞踏

撮影:三浦麻旅子 幻想曲からお世話になっている三浦さんにも急きょ来ていただき写真を撮っていただきました。

麻貴さん

長峰さんFacebookより

モガモモコン

モモコンのはじまり。白神がカメラを回す。 黄色い三角形の前!

モガ体操中

休憩あけ、田上とヘンテコ図鑑でTumigiさんが投稿してくれたモガ体操。

 

写真がまた届いたら、アップしたいと思います。いい景色いっぱい。

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キラリふじみ「モガ渓谷」の記録①

2020年7月10日〜12日にキラリふじみよりライブ配信された親子向け企画、『モガ渓谷〜記憶はだいたい蜃気楼(穴あき谷のおまつり編)〜』がどのような経緯と過程をたどって行われたのか、自分の記録として書き留めておこうと思う。

いつも、バッタバタで終わって流れてしまいがちだが、今回のコロナ禍での企画変更、今までキラリふじみで行われて来たこと、どのようなことに重点を置いていたかを書き留めておくことで今後の何かにもまた役立てられる気がしたからだ。

①そもそもの企画主旨は親子向けのフェスティバル

もともとは、4月〜8月までマルチホールとメインホールという主要劇場が改修工事中で劇場が使えず、それまでの期間で展示会議室という展示や会議ができる多目的なスペースを活用して夏の親子向けの企画をやるということで、演劇、ダンス、音楽、工作ワークショップなどができる一日中遊べる空間、小規模なフェスティバルとして行う予定だった。

タイトルの中の「モガ」は2011年に田上豊テキスト、白神構成・演出で行った劇場ツア−型のパフォーマンスで、キラリふじみの空間全てを使った公演だった。(その時のサブタイトルは「記憶はだいたい憶測」で、劇場を脳内と見立てて作品にした)

「渓谷」はキラリふじみのかたちが谷のようであることや、元々場所としては海だったということもあり、低い位置にあること、そして、だた、「明るくて楽しい!」だけではない「謎」も潜めた演目をラインナップしたかったので渓谷にした。

記憶はだいたい蜃気楼は、夏だと思うので蜃気楼の中の記憶がイメージ。

(穴あき谷のおまつり編)は、公共ホールではあるものの、その日だけは穴あき=アナーキーで自由な空間、子どもたちの自由な発想、いかたを推奨したいと思ったので付けたサブのサブのタイトル。これは、前芸術監督の多田淳之介氏が始めたこどもステーションの影響もあって、子どもを指導してある一定の成果を求めるようなワークショップが多い中、何をやるのかさえも自分たちで考えられる、子どもたちにゆだねる時間を田上も私も一年間経験したからであった。

ラインナップについては、演劇が田上パル、ダンスはモモンガ・コンプレックスになることは決まっていたので、そこからのバランスで田上パルはオリジナルの作品になるので、ぶんがくざこどもげきにシェイクスピアの「テンペスト」を白神が以前振付もしたこともありやってもらうことにした。ぶんがくざこどもげきは、座の俳優たちが立ち上げていてこどもフェスティバルは手作り感満載で人気が高い。他にも防災を演劇にしたり様々なアイデアをトップダウンではなく自分たちで企画し試行錯誤して活動していることが、今回の穴あき谷のおまつりとしても良いと思った。

ダンス方面では、モモコンがどうしても女子でポップな印象があるので、大人の男性、そして子ども向けには少し遠い印象の笠井瑞丈さんと奥山ばらばさんという舞踏のお二人にきてもらうことにした。お二人とも別のタイミングではあったけどダンスカフェに来てくれたこともあり、笠井さんは一昨年度に松本じろさんとセッションを、奥山ばらばさんは昨年度(2020年2月)にきたまりさんとのデュオで来てくださったばかりでしたが、何となくキラリの勝手も分かってくださってる&モモコンにはない破天荒ぶりが期待されたため、お呼びした。もう一つはアグネス吉井の二人。このお二人もダンスカフェにて、パフォーマンスと「沿う」「巡礼」などを用いて観客とワークショップをしてくれて、新たなダンスカフェの形式を編み出してくださったお二人で、すぐできて世界の違う見方を楽しく体感できるとして、ワークショップをしてもらう予定でお呼びした。

あとは音楽が単純にあると空間として締まると思い、清野美土さん(ハモニカ)にお願いした。この方も、「幻想曲」や前回のモガ!にも出演してくれてて、馴染みがある。あまり子ども向けとは思えない存在ではあるが、純粋に子どもが(お遊戯感覚ではなく)ギャンギャンに踊れる音楽性を持っていると感じていた。清野さんは、岩見継吾さん(bass)、服部正嗣さん(drum)をキラリふじみに引き合わせてくれた。

空間

空間は、長峰麻貴さんにお願いした。以前長峰さんが久留米シティプラザでやっていた親子向けの企画、びよよよん王国(地元の産業を活かした素材で空間を作って一日中遊べるパフォーミング空間を作っていた)が素敵だと思っていたので、富士見市にあるなにか素材を使った空間ができないか?ということでお願いし、子どもたちにも作れる何かワークショップ的なこともやっていただこうとしていた。

 

ここまでが、最初のモガ。

この後、コロナ感染症の影響で対策を迫られることになる。

ここからの転換とスーパー人力ライブ配信になった経緯は次の②へ。。。

つづく

 

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