*キラリかげき団の公演も終わり、富士見市民文化会館キラリふじみという公共ホールとの直接的な関係がこれで一段落したので、いろいろ冷静にそして記録・記憶として書き綴ってみようと思う。
始めに、これは私、白神ももこが2019年〜2024年まで富士見市民文化会館キラリふじみ芸術監督としての活動とその前(2006年ごろ)からキラリンクカンパニーやアソシエイトアーティストなど、劇場とアーティストの関わりの年月の集大成としての公演『Open the Door~ダンスの時間〜』の記録です。
まずは前提として、どんなことを芸術監督としての6年間でやろうとしてたかというと、
- 空間を活かし、遊ぶ
- すでにある企画や劇場として持っている財産としての人脈を繋げていく
- ダンスを軸にしているが、単にジャンルで分けず、全てを「表現」として今できるそれぞれの得意分野を交わらせていく
このくらいだったと思う。私の持ち味としては何かすごいもの事を取り寄せたり、新しいものを提供することというよりは、今ここにある素材や空間を有効的に組み合わせて活かしていくことなので、自ずとそうなったようなところもある。このことを軸に『モガ渓谷』『モガ惑星』『幻想曲』などの企画が立ち上がっていった。
そして、最初の3年間は演劇の劇作家・演出家の田上豊と2人体制だったことも、ダンスや演劇などのミックス要素が色濃くなったことに大きく影響している。
『Open the Door-ダンスの時間』に話を戻すと、
私たちの前に芸術監督であった多田淳之介さんが2013年に始めた「キラリふじみこどもステーション」(月一で芸術監督と小学生たちで何かして遊ぶ!とにかく遊ぶ!という企画)と、2021年から私が独自で始めた「ダンスの時間」(月一の誰でも参加可能なダンスワークショップ)をする中で、劇場に来る人びととの関わりの中で何ができていったのか、個人のアーティストにどんな影響があったのか、客席のあり方自体への問いかけや公共ホールと地域との関係性などにもフォーカスが及ぶ公演になったと思う。
実を言うと、最初はこの「こどもステーション」に関して、芸術監督としてこどもたちと対面するまでは、その必要性や意義のようなものを特に実感していなかった。いざ、こどもたちの中に入って自由に遊ぶことで、人間としての関わり方や、劇場に通うというシンプルな習慣のすごさ、この劇場に何が必要なのか、などが見えて来て正直私自身への学びが大きかったのだ。ここに集まる小学生たちに普段遊びに来ている劇場で色んな大人に会ってもらおうとキラリふじみダンスカフェ(アトリエや野外を利用したダンス企画)に来ているアーティストになるべく会ってもらったり、劇場のバックステージツアーを組み込ませたり、公演後に公演写真を見せてして工作の種などにした。もちろん強制ではなくなるべく自由にラフに、そこにあるものとして自然に触れてもらうことを心がけた。時に特別ここでしか会えないんだよ!ということも強調させながら。
このこどもステーションからは、多田空之介くんと空之介くんからスカウトされた井戸綾乃さんが出演してくれた。こどもステーションの中でも中心的な存在で、ムードメーカーであり、一年生の時からずっと参加してくれていた。2人は、出演だけでなく本番の観客席との間を繋いでくれたり、こどもステーションOB.OGへのインタビューでもインタビュアーとしても活躍してくれた。

リハーサルの様子。舞台美術は長峰麻貴さん。 客席に置いてある箱をお客さんに運んで来てもらってスクリーンが完成する仕組み

2006年に全館巡るバックステージツアーをやった時に一緒に出演してくれていた召田実子さんに映像と出演をお願いした。
「ダンスの時間」では、西井あずささんとそのお母さんのさやかさんとの出会いが大きかった。加えてそこに毎回コンスタントに来てくれて、息子さんをこどもステーションにも参加させたり、すでに劇場の企画に多く参加してくださっていた雪竹ますみさんの存在によって、近所の大人の見守りにも似た安心感が生まれていた。ますみさんは、市内の特別支援学校の図書館の司書をされていたこともあり、そこの生徒さんがふいに1人で「ダンスの時間」に来てくれたりするのだが(これもなんか珍しくてすごいことらしく、ダンスの時間の謎の引力かもしれない)、「あれ!図書館の先生がいる!」となっていて普段とは違う場での出会いがあるのも面白かった。絵本専門士でもあるますみさんには途中、こどもステーションの写真からみんなの言葉を募って作った絵本の読み聞かせもしてもらって、それがかなり大人気の時間となった。
こう考えると「こどもステーション」「ダンスの時間」どちらの企画も劇場(公共ホール)というものが一握りのアーティストや何かのお教室の発表のためだけでなく、日常的な「自分たちの場」としても捉えていける最大の仕掛けであり、広場の機能を持っていたように思う。
そんな「広場」に訪れてくれていたキーパーソンたちを迎え、そのキーパーソンたちが客席と舞台の間を行き来して繋いでくれたこと、こどもステーションのこどもたちを客席に巻き込んだこと、今までこどもたちや地域の人びとと近しく親しんでくれていたアーティストやスタッフたちの存在、そんなアーティストたちが客席にもいたこと、いろいろな奇跡が重なっての公演だった。
出演していた側が言うのはなんなので誰かにもっと考察していただきたい気もするが、あの舞台というか、あの客席の状態は、長い時をかけて恐らくキラリふじみという公共ホールが歴代芸術監督と地道に作り上げて来た「作品」でもあると感じたのだった。
余談になるかもだが、観客席にいるはずの小学2年生が思わずカーテンコールに踊り出てきたのをきっかけに、観客席からこの劇場に関わった(と思っている)人たちが一斉に出て来てお辞儀するという信じられないようなできごとと、その後リハーサルもしていないのにその人たちと一緒にメインホールの箱を運びながら踊りながら退場していったことも忘れられない景色である。
つづく(かもしれない)

メインホールホワイエではこどもステーション展を開催。写真やこどもたちの作品の他に、普段の遊びも展開された。
フライヤービジュアルは、水色デザインさんによるもの。「ダンスの時間」の企画が始まった頃の小学2年生のあずささんの踊る後ろ姿がメインビジュアルに。
本番の様子やクリエーションの様子はまた少しずつ更新していけたらと思う。
公演詳細
『Open the Doorーダンスの時間ー』
2025年3月8日(土)〜9日(日)15:00開演(14:00会場)
会場:富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ メインホール
構成・演出・出演:白神ももこ
出演
- 井戸綾乃 多田空之介 西井あずさ 雪竹ますみ ほか
スタッフ
- 美術:長峰麻貴
照明:有限会社創光房
音響:熊谷健
映像:召田実子
衣裳:臼井梨恵
演出助手:仁科幸
舞台監督:原口佳子こどもステーション担当:大道朋奈
映像記録:前田直也宣伝美術:水色デザイン
票券:塚田智大(キラリふじみ)
制作:加藤仲葉/中出千尋(キラリふじみ)
企画・製作 富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ
主催 公益財団法人キラリ財団
助成 文化庁 文化芸術振興費補助金
劇場・音楽堂等機能強化推進事業(地域の中核劇場・音楽堂等活性化事業)



























































